ファッションの話

ある日、近所の洋服屋さんで秋服を探していた。私の向かい側で、どこかで見たことがある人が、服を見ている。挨拶しようにも、頭のなかは、えーっと、えーっと、えーっと…だれだっけ?。…あっ(◎o◎)!。ときどき世話になっている、女医さんだ!。
分からなかったのも無理はない(と、自分で言い訳する)。休日の先生は、すごーくファッショナブルでカッコよかったのだ。病院では、白衣、薄化粧、長い髪は後ろに一つに束ねている。地味だけど、小柄で、かわらしい印象があった。しかし、目の前にいる先生は、キャスケットを斜めにかぶり、化粧もばっちり、流行のロングシャツ、ダメージのデニム、スタッズのついた太ベルトをしていた…。私も、小柄だから分かる。これらは小柄な人が似合う服ではないのだが、とてもカッコよく着こなしていた。
目があって軽く会釈したが、私のことは分からなかったみたいだ。そりゃそうだ、毎日、百人ちかく患者さんを看てるしね。店員さんに、気になる服のことをあれこれ聞いていた。その声や口調は…まぎれもなく先生だった。
服や化粧で、印象がずいぶんと変わるもんだなぁと思った。それにしても、なぜ、私はあういう着こなしができないんだ、何が違うんだと、考えてしまう。
仕事をするようになってから、だんだんと服装や見た目を意識するようになった。以前は、服に関してだけは保守的だった。トラッド、シンプルな服ばかりで、同じ形のコートを紺とベージュで2着買うとか、同じシャツをブルーとピンクで2着買うとか、そんなこともよくやっていた。他人から見て酷い…というほどではなかったと思うが、バリエーションに乏しく、冒険もしなかった。
しかし、服装を意識するようになったからと言って、急にセンスが良くなるわけではない。自分であれこれ考えると、何かバランスが悪かったりするので、最近は、気に入っている店で、店員さんにアドバイスしてもらいながら、上下揃えて買うというのが増えた。そのため、手持ちの服は、トップとボトムの組合わせが概ね決まっていて、あまり応用がきかない。たまに、別な組み合わせとか、ちょっとイメージを変えようと、新しいものを単独で買ったりすると、???になってしまう。一つ一つは気に入っていて、それなりに流行ものなのに、組合わせのちょっとの違いで一気にダサくなる。
妹に、その話をしたら、「おねーちゃんの服は、ぜーんぶスーツってことだね」と笑われてしまった。まったくである…。

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