カリキュラマシーン

小学校低学年の頃、「カリキュラマシーン」という子供向け教育番組があった。30年以上経っても、頭にこびりついて離れないフレーズがいくつもある。「あいつのあたまはあいうえお」、「あ行あ段の”あ”」、「くっつきの”は”」、「5のかたまりと5のかたまりで、10のたば、バラのタイルが3」、「ねじれて、ねじれて、きゃ・きゅ・きょ」、「3はきらいだよ~、いつもひとりなかまは~ずれ」
私は、算数の繰上がり、繰下がりの計算が苦手だった(今でも、咄嗟の暗算だと間違えることがある)。小学校の1,2年ぐらいまでは、カリキュラマシーンのタイルを思い浮かべながら計算していたのである。7+6だと、「7」は5のかたまりタイルとバラのタイル2、「6」は5のかたまりタイルとバラのタイル1、5と5のかたまりで10のたば、バラ2と1を合わせて3、だから13って具合に。
ずーっと、もう一度見たいと思っていたが、2004年にDVDが発売されていた。ヤフオク散策中に、発見し、落札。3本セットで、セレクトされた24回分がおさめられている。
番組の構成は、例えば「0」、「あ」、「くっつきの”を”」とか…毎回テーマがあり、30秒ぐらいのギャグのなかで、そのテーマが繰り返し繰り返し、登場するという感じ。それが、マシンガンのように、次から次へと繰り出される。「ゲバゲバ90分」のスタッフで企画制作され、ノリはゲバゲバである。
改めて見て、懐かしさもあるけど、宍戸錠、藤村俊二、常田富士男、吉田日出子、渡辺篤史らの体を張った演技、子供に見せたくないものを敢えて見せるギャグや場面設定にも驚く。子供心に、他の教育番組とは違う危険な香りを感じていた理由が分かった。おねえさんがうっふんうっふんしているお店とか、酒場とか、全共闘学生運動とか…。そんな危険な場面で、おひょいさんが棺桶から飛び出してきたりして、「切手の”きっ”は、つまる音ー」とか、叫んでいるのである。「切手」を例に出したいなら、べつに棺桶じゃなくてもいいのだが、というか、ぜんぜん関係ないけど、棺桶なのである。30年経っても、大人が見ても、面白い。今、子供向けに放送したら、相当クレームや批判が来そうだな。
今だから分かるが、映画からヒントを得たと思われるものも、いくつかあった。フランス映画のドタバタコメディ、ジャック・タチのぼくのおじさんシリーズをパクっていたり、「1」が2001年宇宙の旅のモノリスのようなアニメで登場したり。アニメショーンもとても凝っている。
映像・ギャグは面白かったなぁという記憶はあるのだが、覚えているのはロボットやゴリラ、顔のまるいおにいさんがいたことぐらいだけで、おぼろげだった。しかし、DVDを見ると「あっ、このシーン見た」とか、「この回は見てる」とか、しっかりした感触で甦ってきて、ギャグのオチのシーンとか、次にどうなるか、鮮明に思い出すのである。
特典映像で、演出、ディレクター、美術、宍戸錠、藤村俊二、吉田日出子のインタビューを見た。大人の番組以上に真剣に、身をすり減らして制作していたことが分かる。こういう番組を、子供の頃に見られて幸せだったな、と思う。

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