モーリス・ジャール死去

先日、新聞の追想録コーナーで、モーリス・ジャールが3月に亡くなったことを知った。映画音楽作曲家の巨匠である。代表作は、デビット・リーン監督と組んだ「アラビアのロレンス」、「ドクトル・ジバゴ」、「インドへの道」、「ライアンの娘」。他には「ブリキの太鼓」、「史上最大の作戦」、「パリは燃えているか」など。堅い文芸作から娯楽作まで、多才な作曲家だった。当サイトCinemaDiaryに取り上げた、たかが100本程度の作品のなかにも、彼の作曲が「ドクトル・ジバゴ」、「シベールの日曜日、「大列車作戦」、「ロイ・ビーン」と4作品も入っている。
最近の映画音楽は、効果音と変わらなくなっているような気がする。上手く言えないけれど、旋律より、リズムが強調されている感じ。例えば怖いシーンでは、音をあまり使わず、低い音を、心拍数と同じぐらいのリズムで、単調に続けるとか。勇ましいシーンでは、パーカッション、金管を派手に使ったオーケストラで、荘厳に音をじゃがじゃがと音を重ねるとか。効果音的音楽は、とくに音楽音痴の私なんかには、どれも似たり寄ったりに聞こえてしまって、印象に残らない。
映画音楽は、その曲を聴いたら、映画のシーンがふわーーっと思い浮かぶというのが、名曲だと思っている。例えば、「ドクトル・ジバゴ」のラーラのテーマ。バラライカのシンプルな響き、幸福感に満ちた美しい旋律。映像やストーリーと合っているかというと、そうでもない。ラーラの母が自殺未遂した後のシーンとか、今生の別れのシーンで流れたりするから。でも、そのメロディが流れると、ラーラの可憐だったり、うちひしがれていたりする姿が、ジバゴが彼女を思い出すのと同じような気持ちで、思い浮かんでくる。
そうした名映画音楽をたくさん残した作曲家だった。残念である。

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