川島小鳥「未来ちゃん」

110519miraichan.jpg写真集を購入した。川島小鳥『未来ちゃん』(ナナクロ社)。
表紙に瞬殺された。。。なんなんこの子は。

親の敵のようにご飯を食べ、鼻水をぐちゃぐちゃ垂らして泣きじゃくり、大人もどきっとする怖い目でこっちを睨んだかと思えば、愛らしいおすまし顔。未来ちゃんがきったない家や田んぼを走り回れば郷愁をくすぐり、街のなかにぽつんと迷い込むとものすごく不安になる。
子供の写真を撮るとき、プロでも天真爛漫で無邪気で可愛くて…という子供らしいイメージを求め、子供もその期待に応えちゃってるのかもしれない。
この写真集には、そういう誰もが抱いているような子供らしいイメージの写真がない。泣く、笑う、食べる、走る、寝っ転がる…ごくありふれた日常のなかで、何をするにも真剣勝負で、生きるエネルギーがみなぎっている未来ちゃんの一瞬がある。小鳥氏も可愛く撮ろうなんてあまり考えてなそうだし、撮られる子供も大人に媚びていない。とにかく今まで見たことがなかった子供の写真に衝撃。

でも、「ありのまま」ではない。心惹かれる写真ほど写真家の計算や狙いが働いている。被写体の女の子は今も何処かの田舎で暮らしてるのかもしれないけど、それは未来ちゃんじゃない。小鳥氏の手によって、この本のなかで未来ちゃんが生まれた。未来ちゃんのめまぐるしく変わる表情にも惹かれるけれど、むしろ彼が未来ちゃん通して作り上げた世界の方に心をぐっと掴まれる。レトロな衣装や小道具など一つ一つ見てると、チョットあざとさも感じるけど。

私が小さい子供を写真に撮るとき、どんなにカメラを意識させないようにしても、2歳ぐらいになるとカメラを意識しはじめる。よほど夢中になって遊んでるなら別だけど、そうっーと気づかれないようにカメラを構えても、ふっと作った表情になっちゃう。未来ちゃんの表情を引き出させる小鳥さん、凄いなぁと思う。

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