3月の映画鑑賞メモ

ジョン・ヒューストン『黄金』1947年,アメリカ,DVD
1920年代メキシコ。一攫千金を狙う男3人。それぞれ人物の作り込みが丁寧。金を目の前ににした時の三者三様の欲望と人間性が見どころ。脚本もお手本のように美しい。黄金探しを軸に、突拍子もなくいろんな細かいエピソード(伏線)がく絡んでくるけど、きれいにラストのオチに収束していく。ハンフリー・ボガードの汚れ役はじめて見けど、なよっちぃ二枚目より断然良い。そこまで汚れなくとも…というぐらい、心も見た目もボロボロに汚れてくれる(笑)。主要人物のひとり、カーティン役のウォルター・ヒューストンはジョン・ヒューストンの父。本作で、監督賞、助演男優賞、親子そろってアカデミー賞受賞。

デビット・フィンチャー『ソーシャル・ネットワーク』2010,アメリカ,DVD
同監督の『ドラゴン・タトゥーの女』が面白かったので、昨年、話題になった本作も気になって鑑賞。フェイスブック創設者マーク・ザッカーバーグの物語。ネタは実話。映画の疾走感と、フェイスブックが瞬く間に世界への広がっていくネットのスピード感が重なってくる。アメリカの大学には「クラブ」があり、将来にわたって先輩後輩の人脈が維持されていくことは知ってたけど、ハーバード大学の「クラブ」がこんなに排他的で、特権意識があるとは知らなかったな。エリート大学のなかに、さらに血筋家柄能力のあるクラブ所属で卒業後も恵まれた人脈を築ける超エリートと、クラブへの入会を許されないその他学生という厳然たる階級社会がある。マークのFacebookは、「クラブ」の奴らから小バカにされた扱いを受けたことに対する見返し、嫌らしい特権意識に対する反感だったとも取れる描き方。11年キネ旬2位。

ロマン・ポランスキー『ゴーストライター』2010イギリス,DVD。
最近見たサスペンスでは1等賞。偶然だと思うけど、設定が『ドラゴン・タトゥーの女』と似ている。ドラゴン…は特殊な才能の持ち主が、超ハイテク機器を駆使する。あまりにも素人ばなれしているところに、魅力やワクワク感がある。その割にオチはわりかし平凡。一方、本作は、超地味ーーーなライターが、だれにでも使えるツールで、一般人らしく謎に迫っていくところにハラハラしてしまう。つまり、観客と主人公が同じ目線で謎を追っていくおもしろさ。そして、じわじわと伏線が回収されていき、すべてつながったとき、霧が晴れるように、一般人は想像すらしないだろう怖ろしいことが分かってくる。この主人公には名前がない。ただのゴースト。これは最後まで見ると、意味深。さすが巨匠。映像が美しく、映像で語るのがうまい。最後の数カットには唸るよ。今、いちばんのオススメ映画。

ピエル・パオロ・パゾリーニ『アポロンの地獄』1967年,イタリア,DVD
物語はオイディプス王。しかし、古代ギリシャとはまったく別の世界。中東のような砂漠だったり、アフリカのような仮面や衣装だったり、日本の古楽をつかったり、パゾリーニ独自の土着的な古代世界に引き込まれる。話も話だし、パゾリーニ的様式美の舞台劇って感じで、あんまり現実味がない。しかし、はじまりがファシズム時代、急に古代へと移って話が展開し、ラストが現代と、時代が何の説明もなく飛ぶ。ギリシャ悲劇が現代に蘇ってくるような感覚をおぼえた。

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