5月の映画鑑賞メモ

ジョン・ヒューストン『マルタの鷹』1941年,アメリカ,wowow録画
ハードボイルド映画名作として必ず挙げられるけど…。お互いに裏の裏をかく展開で、当時は面白かったのかもしれないけど、実はこうだったみたいな説明セリフばっかりで、作り方が下手。ほぼ室内シーンというのも、メリハリがなくて飽きさせる。そして、主演のハンフリー・ボガード。うむむむ…二枚目役が多いんだけど、やっぱりこの人、二枚目・ハードボイルドには合わないような気がするなぁ。顔もそんなにカッコ良くないし、声が高い。先々月、見た『黄金』の汚れ役の方がずっと輝いていたぽ。

デイヴィッド・クローネンバーグ『戦慄の絆』1988年,アメリカ,wowow録画
実話ネタのサイコスリラー。双子の兄弟がシンクロするように崩壊していく。どろどろの人間関係を静かーにひややかに展開させていく、この冷たい空気感が好き。オープニングからぞくっとする。赤の手術着や手術道具もかなりのインパクト。臓器的な造形が好きだよなーこの監督。どうでもいいけど、デビッド・クローネンバーグ、デビッド・フィンチャー、デビット・リンチを混同してしまうことがある。名前も似てるけど、作品にも共通するものがある。

ミロス・フォアマン『宮廷画家ゴヤは見た』2006年スペイン・アメリカ,DVD
同監督『アマデウス』絵画版。アマデウスが、サリエリという嫉妬に狂った人間が語るモーツアルトなら、本作はゴヤという人間の内面を冷徹に観察する画家が見た人間の美しさ(光)と醜さ(影)。彼が冒頭で登場人物たちをどんな風に描いているのかが重要。その印象が最後まで貫かれてく。特に、ロレンソは顔がない。最後までみると、そうかー、確かにそういうヤツだったわ…と思う。映像はどのシーンを撮っても絵画的な美しさ。ストーリーにはあんまり関係ないけど、銅版画の制作過程を延々と見せたりところなんか、憎いなーと思う。それがあるだけで時代の空気、リアリティをぐっと感じさせるもの。イネス役のナタリー・ポートマンが素晴らしい。「ブラックスワン」より、私はこの作品の方がオスカーにふさわしいと思う。ロレンソ役のハビエルは、期待通りに嫌悪感をたっぷりとふりまいてくれ(笑)、余裕しゃくしゃくって感じ。ラストシーンはかなり好き。

根岸吉太郎『遠雷』1981年,日本,DVD
期待以上に面白かった。急速に都市化するなかで、農にこだわる満夫。周囲は団地だらけ、父は土地を切り売りし、母は土木工事のアルバイトし、満夫もスポーツカーに乗っていたり、セックスにはさばけていたり、現代的。家族も農村共同体も崩壊しているのだけど、冠婚葬祭ではまだ旧き良き共同体慣習が残っていたりする。同時代に、こういうい農家を間近に見て育った者には、時代の息づかいがものすごくよく分かる。満夫の結婚式のように、式場なんかじゃなくて、自宅の仏壇や神棚の前で三三九度して、お膳をずらーっと並べて、近所のおばちゃんたちが割烹着着て手伝いに来るなんて結婚式、私の小さい頃にはまだあったもの。石田えりがはじめてヌードになったことでも話題になった。もと日活ロマンポルノの監督なので、石田えりのヌードシーンは美しい。

クロード・ソーテ『ギャルソン!』1983年,フランス,DVD
25年ぶりに鑑賞、フランス映画らしいフランス映画。音楽も軽快、大人たちの恋愛模様が軽妙に描かれていく。年を重ねれば恋も仕事もうまくいかないことは知っている。でも恋も夢追うこともやめない、それが人生の幸せだから。初老にさしかかっているイヴ・モンタンがギャルソン姿で立ち回る姿はみとれてしまう。かっこいい。フランスの殿方って優しいな~いいな~(笑)

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