6月の映画鑑賞メモ

ゴッドファーザー祭り!。

フランシス・F・コッポラ
『ゴッドファーザー Part1』1972年,アメリカ,DVD
マフィア映画の金字塔。見れば見るほど、凄い映画だわと思う。完璧。語り尽くされて、今更何も言うことがないけど、私が魅力に思うのは、マフィア映画のお約束=裏切った裏切られただけじゃなく、人間を掘り下げているところ。ドン・ヴィトの一貫した家族的温情主義、しかしそれゆえ時代の変化に対応できず、過去の人として去りゆく一抹のわびしさ。2代目マイケルの否定できない「血」の哀しさ、父とは違ったやり方で新しい時代のマフィアとしての才能を開花させていく変貌ぶり。背負っているものの過酷さがひしひしと感じられるの。マーロン・ブランド、アル・パチーノも最高。

『ゴッドファーザー Part2』1974年,アメリカ,DVD
Part1以上に評価が高い。よく知られていることだが、Part1、2ともにアカデミー賞作品賞を受賞したのはこのシリーズだけ。若き日のヴィトと、Part1後のマイケルが交錯する。家族と同胞「ファミリー」を守るために犯罪にも手を染めマフィアのドンになっていくヴィトと、犯罪組織から足を洗うためにビジネスの組織としての「ファミリー」を拡大させようとして、家族を失っていくマイケル。これはシリーズを通じて言えることだけど、ストーリーや殺しのシーンまで、つねに対比によって、裏社会の暗さ、そこに生きる者の哀しさをより深め、余韻を生み出すような演出を多用する。本作のラストシーンも泣かせる。また、ゴッドファーザーは映像や細かい仕草に大きな意味や情報が含まれており、想像力フル回転なのだが、Part2ではそういう演出がPart1よりさらに緻密になっていて気が抜けない。でも3時間あっという間。

『ゴッドファーザー Part3』1990年,アメリカ,DVD
 前作2作とはかなり趣きが違う。映画の完成度は高いけど、Prt1,2の非情で冷徹な世界に対して、このベタッとした叙情的世界は好き嫌いの別れどころかな。なんて言うの、ゴッド・ファーザーというよりゴッド・パパ?。年老いたマイケルの引き際。人生の後悔や苦悩が描かれていく。。ラストのオペラの華やかさと凄惨な殺し合いのクロスカット。これだけ見るなら、素晴らしいシーンだと思う。しかし、これと同様の演出がPart1のラスト、Part2のヴィトーの初めての殺しなど、尺も長く、印象的に使われていて、Part3でもこの手法がきたときは、またか…とちょっとゲンナリしてしまった。重要な役どころ、マイケルの娘メアリー役を演じたソフィア・コッポラ(監督の娘)。一生懸命さは分かるんだけど、演技も下手、いまひとつオーラがない。

ミヒャエル・ハネケ『愛、アムール』2012年フランス、下高井戸シネマ
老老介護。老夫婦二人の世界をただ静かに見つめる。これが最良の選択かどうかは置いといて、愛し合い、尊敬し合い、誇り高い二人なら当然そうなるだろうな、と納得させらた。妻にとっては自分が変わる姿を家族や他人に見られることがひどく辛く、夫もまた愛する人が変わっていく姿を見ることが辛かったのだろう。妻が亡くなった後、夫は冷静に服を選んだり、花を買いに行ったり。泣いたり、わめいたりというより、人間って意外に日常的な行動をとる。そういう演出がリアル。私の隣で見ていた70代くらいの女性二人組が。終わった後で「こんなしんどい映画はじめて…」と言っていた。が、絶望的で時には人を不快にさせる映画を撮るハネケにしては、美しく、救いもある映画だと私は思う。ジャン・ルイ・トランティニャン、82才(←代表作は『男と女』1966年)、素晴らしい。

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