『あゝ野麦峠』DVD化

山本薩夫『あゝ野麦峠』(1979年、主演大竹しのぶ)のDVDが16日に販売されていたことを知り、速攻でポチる。ずっと、もう1回観たいと思っていた。

私は中学生の時に観たけど、内容をわりと憶えている。大人になってから勉強して気付いたんだけど、ドラマとして考えさせられるというだけでなく、時代考証もしっかりしてたなと思う(30年前の記憶でまちがってるかもしれないけど)。例えば、大竹しのぶが一等女工になって万歳するシーンを憶えているんだけど、あれは製糸業に独特の賃金制度、等級賃金制を描いていたんだーと後からじわじわと分かってきたり。原作の山本茂実『あゝ野麦峠』(角川文庫)は製糸女工たちの証言を綴ったルポタージュであり、歴史的資料としても価値がある本だということも関係してるのだろう。

1880年代から1900年後半ぐらい、日本でもイギリスより100年以上遅れて産業革命が始まった頃。後進国日本は資源も技術もなかったから、先進国に対抗して近代的な軍備とそれらを支える重工業を確立させるには、工業資源と機械の輸入、つまりはそれらを輸入するための外貨が必要だった。日本には大した産業もなく、外貨獲得は生糸の輸出にかかっていた。貧しい農村から製糸工場に出稼ぎに行く、というよりは親が受け取る前借り金のカタとして働かされる少女たち。12,3才ぐらいなら立派な女工。工場に行けば、昼夜二交代、ほとんど休みなしの12時間労働。低賃金。劣悪な労働環境。日常的な折檻。病気にならない方が不思議なくらいである。しかし、こんな最悪の職場でも小作農家にとっては大切な現金収入源だから、製糸工場は低賃金でこき使える少女たちをいくらでも雇うことができ、そのおかげで日本の生糸産業は国際競争力を持つことができた。

今日の朝ドラ「花子とアン」で、花子が妹が製糸工場へ行くと知ってショックを受けるシーンがあった。花子15才という設定だから、妹はやっぱり12,3才ぐらいかしら。そんな幼い年齢なのに、当時は製糸工場に出稼ぎ=死ぬかもしれないってぐらいの過酷さがあったんだろうな。

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