コニー姐さんに捧げるカンノーリ(毒なし)

映画に出てきた気になるお菓子を作って食べてみよう!(←ますます調子こいてます)。第3弾は、フランシス・フォード・コッポラ『ゴッドファーザー Part3』(1990)で毒殺に使われたお菓子。
第1弾>「ランダ大佐に捧げるシュトゥルーデル(2014.5.20)」
第2弾>「パッツィーに捧げるシャルロット・リュス(2014.6.22)」

 コニー姐さんの武器

コニー(タリア・シャイア)は、コルレオーネファミリーのドン・マイケル(アル・パチーノ)の妹。Part2までは人生イロイロありすぎて自暴自棄になっていたけど、腹が据わったのか、Part3では気弱になったマイケルとは対照的に、ファミリーを支える貫禄ある姐さんになって登場。
コルレオーネファミリー、壮大な物語のクライマックス。コニーは、敵の黒幕だと確信したドン・ホニャララ(名前書くとネタバレになるので)に、オペラの劇場で「おじさま~お菓子作ってきたのよ~」と毒入り菓子を差し入れる。ドン・ホニャララは警戒して彼女に一口食べさせるのだけど、彼女がパクッと食べたことで安心してしまって、観劇中にガツガツ食べてしまうというシーン。
これがクリームたっぷりのコルネに似たお菓子で、とっても美味しそうだったのよ…毒入りだけど。
上の画像は、毒見中の姐さん。
下の画像は、お願いだから死んでちょうだい…と、オペラじゃなくて、ドンの方をガン見している姐さん。
Part1で、コニーの結婚式からコルレオーネファミリーの物語の幕が開くのだけど、あの初々しかった花嫁が、毒見でも毒殺でもシレッとやってのける立派な姐さんになっちゃって…とシミジミ振り返ってしまったよ。

カンノーリを作って食べてみよう

「ゴッドファーザー 毒殺 お菓子」でググったら、たくさんの熱烈な『ゴッドファーザー』ファンがすぐに教えてくれたよ。さすが別格映画!。
それはカンノーリというシチリアの伝統菓子(単数形ではカンノーロ)とのこと。今では年中食べられるけど、昔はカーニバルの時期に食べられていたらしい。小麦粉を練って薄く伸ばした生地を筒状にして油で揚げ、リコッタチーズ、ドライフルーツ、チョコレートなどを混ぜ合わせたクリームを詰めたお菓子。
レシピもいっぱいupされていた。既にNHKの『グレーテルのかまど』(著名人、映画、小説などのエピソードとともにお菓子の作り方を紹介する番組)でも、「ゴッドファーザーのカンノーリ」として取り上げられてた。この番組、私よく見てるのだけど、この回は見てなかったなぁ、うかつだったぜ。
そこで。グレーテルのかまど ゴッドファーザーのカンノーリのレシピを参考に、カンノーリ作りに挑戦。

H王子では、材料のリコッタチーズとマルサラ酒が入手しにくくて、あちこち探し回ったのが、ちょっと手間だったかな。生地を一枚ずつのばしたり、筒に巻き付けたりと、それなりに時間はかかるけど、お菓子作りとしてはとても簡単で、失敗する要素なし。カンノーリの型はパンのコルネ型(φ25、ブリキ製)で代用。で、完成品はこちら

簡単なのに、味は
マジ絶品
↑自画自賛(笑)。

第1弾のシュトゥルーデルにしても、第2弾のシャルロット・リュスにしても、作ってる段階で大体の味の想像はつくのよ。で、実際の味も想像を裏切らない。でも、カンノーリは想像もできなかったし、こんなお菓子、今まで食べたことがなかったという意味で感動的だった。
見た目は重そうだけど、意外にあっさり。皮は油で揚げているけど、薄いからそんなにくどくない。なかのクリームに使うリコッタチーズはミルキーで、ほんのり甘くて、軽くてクセがないフレッシュチーズ。そのまま食べるとミルキーな豆腐を食べてるみたいよ。これを水切りして、粉糖、オレンジピール、自家製マラスキーノチェリー、チョコレートを刻んで混ぜただけなんだけど、これだけで立派なドルチェになるぐらい美味しい。油っぽさはまったくなくて、ミルクにちょっとヨーグルト風味が混ざったようなサラリとしたクリーム。パリッと香ばしくて、マルサラ酒がほんのりと香る皮と一緒にほおばると、リッチな味わい~。これはイタリアンな深めの焙煎のコーヒーに合うね。

 カンノーリ、それはマフィアの故郷と家族の味

シチリアからの移民1世のドン・ホニャララにとっては、カンノーリは懐かしい故郷の味なのだろう。もしかしたらシチリアなら家庭にある材料でチャチャッと作るマンマの味なのかもしれない。だからあんなに喜んで食べちゃったんだろうし、そしてコニーも、これなら油断して食いつくと知ってたんだろうな。
このカンノーリ、実はPart1のセリフのなかにも出てくる。日本語字幕では「ケーキ」と訳されていた記憶があるが…。コルレオーネファミリーの幹部クレメンザが、一族内の裏切り者を始末しに行くシーンで。彼が家を出る時に、奥さんに「カンノーリ買ってきてね」と声をかけられる。そして、カンノーリを買い、車のなかで仕事を終えた後、手下に「Leave the  gun take the cannoli」(銃は置いていけ、カンノーリを取ってくれ)と言うんである。これは有名なシーンで(っつうか、Part1は有名なじゃないシーンがないってぐらい、画づくり・カット割りが全て完璧なんだけど)、冷酷非情、家庭的で優しい夫という二面性がマフィアのなかに違和感なく同居してることを印象づけるセリフである。「ケーキ」でもそれは感じられるんだけど、マフィアが家族で「ケーキ」を食べる場面より、「カンノーリ」を食べる場面を想像すると、カンノーリの方がより家族愛とか移民家族の結束力みたいなものをより強く印象づけられる。「ファミリー」はゴットファーザーのテーマだしね。

このカンノーリをもちまして、映画で気になるお菓子シリーズのネタは尽きました(爆)。また何か気になるものに遭遇したら、作ってみたいと思います。それにしても…第1弾ランダ大佐=ナチ、第2弾パッツィ-=ギャング、第3弾コニー姐さん=マフィア、悪人ばっかり。
悪人は甘いものがお好き?なのかしら。

 おまけ

NHK、Eテレ『グレーテルのかまど』は、(金)夜9:30~9:55放送。クリックすると番組HPへ。
ナビゲーターは瀬戸康史。15代目ヘンデルの瀬戸君が、忙しいお姉ちゃんのために甘いものを作って帰りを待っているという設定。番組の終わりは、「あ、姉ちゃん帰ってきた、おかえりーカンノーリ作ったよー」とお出迎えに行くのがお約束。
あぁ瀬戸君の姉ちゃんになりたい…。

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