言語の響きは重要であると分かった件

パオロ・タヴィアーニ・ヴィットリオ・タヴィアーニ『グッドモーニング・バビロン』(1987年,アメリ カ=フランス=イタリア)のブルーレイを鑑賞した。1910年頃にイタリアで聖堂の修復をしていた兄弟が、アメリカに渡って、ハリウッド創生期の巨匠グリ フィス監督に認められ、彼の大作『イントレランス』のセット作りに関わっていく話。学生時代に映画館で観て印象に残っていて、願いかなって、ようやくブルーレイが発売され、再び見ることができたのだが…。

あれれぇ

すぐに違和感。まず言語。イタリアでのシーンや兄弟同士の会話はともかく、ハリウッド撮影所での会話もぜんぶイタリア語、アメリカ人のグリフィス監督やハリウッド女優までイタリア語を喋ってる。何か不自然。内容も記憶とほぼ同じだけど、こんなベタベタした、ダサい映画だったっけ?と、頭のなかに「?」マークを散らしながら見終わった。そして、最後に「字幕 戸田奈津子」って出てきてびっくり。オイオイ…いつからイタリア語字幕まで作るようになったんだよ。何かがおかしいとぞと、 ジャケットやリーフレットをよく見たら、目立たないところに書いてあった説明に、そっか、そういうことかと納得。これじゃあ、この映画の面白さが半分も伝わらないよ。

このブルーレイには、ディスクが2枚入っている。
本編ディスク イタリア語吹き替え版 HDリマスター
特典ディスク 映画公開時オリジナルの英語版(一部イタリア語) SD画質
だったのである。

そう、私が30年近く前に映画館で観たのはオリジナルの英語版で、イタリアでのシーンはイタリア語、アメリカのシーンは英語だった。今回見たのは、本編ディスクのイタリア語吹き替版の方。なので、アメリカでのシーンも全イタリア語。言語が変わらないから、兄弟がはるばる新天地へと来たぞー!という感じがいまいちしないし、イタリア語だと、ハリ ウッド映画の製作現場のワクワク感や華やかさが出ない。イタリア語がダサいというわけではないんだけど、ハリウッドは、当時、最もクールな場所なはずなのに、何かイモっぽいというか、雰囲気が田舎くさいんである。また、イタリアやイタリア映画のイメージから、イタリア語の響きは情熱的、叙情的で、感情が大げさに表現される印象があって、登場人物たちの感情が高まるようなシーンも英語版では自然でも、イタリア語だとクサくてわざとらしいシーンに見えてしまう。
HDリマスターのテープがイタリア語吹き替え版しかないから、画質の良い方を本編ディスクにして、英語版の戸田奈津子字幕をイタリア語吹き替え版にそのまま入れたんだろう。でも、内容的に優れた作品なら、画質は多少悪くても、見ているうちに気にならなくなるけど、言語の違いは映画の印象を大きく変えてしまう。この『グッドモーニング・バビロン』は、画質が悪くても、英語版の特典ディスクで見ることをオススメする。

でね。ちょっと、想像してみたの
香港カンフー映画のロシア語吹き替え版…ないない
フランスこてこて恋愛映画の中国語吹き替え版…ないないない(笑)、
マカロニウェスタンのフランス語吹き替え版
マカロニウェスタンじゃなくなっちゃう(大笑)。言葉の意味はどうせ分からないし、内容は字幕で理解するにしても…である。言語の響きやイメージには演出効果もあって、意味が分からなくても重要なんだねってことがよく分かったよ。

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