崖っぷちのストロボ撮影

ちょっと前の記事で、3月後半は気持ちに余裕がなかったことを白状したけど、その話。

お世話になったボスが3月で引退したのだが、そのパーティでの写真撮影を依頼された。不安材料はあったが、お引受けした。ボスにはお世話になったのに、出来が悪い私は仕事でまったく貢献できなかったから、せめて、このくらいの恩返しはしたいという気持ちもあった。
その不安材料というのは…パーティは夜、会場はホテル、ストロボ必須なのだが、

ストロボ持ってない。
外付けストロボで撮影したことない。

大丈夫かよ…。

ストロボで、被写体を自然に美しく撮影するのは難しい。何も考えずに、自動でピカっと光る内蔵フラッシュで撮ったら、被写体の背後に暗い影がくっきりと張りつき、化粧した顔が真っ白にテカって、暗闇に浮かび上がるようなお化け写真になっちゃったことってありません?。
写真趣味の方はご存知だと思うが、通常、一眼レフの上位機種は、外付けストロボを使うことを前提に作られている。外付けストロボは、光量がでかくて調整ができるし、ストロボの向きを変えられたり、カメラから離したりもできるし、オモチャみたいな内蔵フラッシュよりずっと調整幅が大きいので、撮影する環境に応じて上手く使えば、被写体を自然に美しく撮影することが可能だからだ。
しかし、外付けのストロボを使いこなすには、修業が必要。撮影する環境は一定じゃないから。照明が暗かったり、ビカビカしてたり、照明に変な色がついていたり、天井が低かったり高かったり、壁が暗かったりと、環境はさまざま。適した光量、光のあて方、カメラ側の設定など、いろんなことをその場で瞬時に判断しなければならないが、どういう状況でどういう設定にすれば、被写体をきれいに撮影できるかは、経験値を積まないと分からないところがある。

それなのに、失敗しちゃいけない場で、はじめてのストロボ撮影。崖っぷち…。とりあえずストロボを買って、いろんな条件下で練習するしかない。ってことで、すぐに
キヤノン スピードライト430EXⅡ
を購入。ストロボは余裕ができたら、コレを買おうと決めていたから、まったく悩まず。
さらにブラケットとディフューザーも購入。ストロボはカメラのレンズに近い位置の方が、そして光は拡散させた方が、影がでにくく、自然な描写になる。 そこで、まずレンズとカメラの距離を近くするために、ブラケットという専用金具を使って、ストロボをカメラ上部ではなく、横に取り付けられるようにした。 また光を拡散させるには、ストロボの光を直接被写体にあてずに、いったん天井や壁に反射させるバウンズ撮影ができれば理想的なのだが、はじめての私にそんな高度な技で失敗なく撮る自信はまったくないので、ストロボに直接取り付けて光を拡散させる小道具=ディフューザーを使うことにした。カメラ上級者に言わせると、ディフューザーなんて超カッコ悪りぃ~らしいが、私はそんなこと言ってられないの、腕の未熟さは道具でカバー

で、装備してみたのがコレよ。

え?兵器?
じゃないわよ。ヤバい光線とか出てこないから(笑)。なんだか仰々しくなっちまったぜ。正直、これを会場に持ち込むのは勇気いるわ…と思ったが、見てくれを気にしている場合じゃない。さっそくこれで、いろいろな場所で練習してみたが、なかなか最適な設定がつかめず。そうこうしているうちに、日は迫ってきて、不安なまま、いざ本番へ!
会場で、いかつい兵器カメラを装備すると、知り合いから、「良いカメラ使ってますね」とか、「本格的な機材ですね」とか、「そういうカメラだと、やっぱり良い写真が撮れるんでしょうねぇ」と…声をかけられる。普段なら、とてもうれしいんだけど、今回は気持ちがいっぱいいっぱいで、もう、一言一言がプレッシャー(爆)。こんな重装備で、あの程度の写真かよ?って思われたらどぉしよぉおーと、緊張しまくりながら撮影した。

結果は。自分で点数をつけるとしたら、50点。ディフューザーの効果だと思うが、影はほとんどでなかった。しかし、ディフューザーをつけたことで光量不足になり、会場の照明が黄色っぽかったので、その色に引っ張られて、全体的に黄色かぶりした写真になってしまった…orz。光が届いた手前の人はきれいな肌色なのだけど、後ろの人の顔色が黄色っぽい。みんな良い表情をしてるのになぁ、と悔やんでももう遅い。
しかし、大切なシャッターチャンスを逃しちゃったとか、ブレブレで使えない写真ばっか…という重大ミスではないし、コンデジの白浮きお化け写真よりはずっとマシと居直り、RAW現像で黄色かぶりを不自然にならないところまで補正して70点ぐらいの写真に仕上げた。いろいろ反省点はあるが、できあがった写真を見て、このくらいなら責任は果たせたかな、と胸をなで下ろした。

次はもうちょっと上手く撮れると思う。しかし、ボスにとってこの記念日は1回きり、次はないの。これが一生残る写真になる。1回、1回のシャッターチャンスの大切さを身に染みて感じたのであった。

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