2017年後半期の映画メモ(1)

実は、私、年齢の割には白髪がかなり多くて、白髪染めにお金も手間もかかるようになってきたのですが、近ごろ、陣内孝則や、松重豊や、水谷豊が華麗に白髪カミングアウトするのを立て続けに目撃しまして、私も50代になったら白髪デビューするぞ!と決心したshimiです。
たまっていた映画まとめ、頑張って更新するぞい!。インパクトあったやつ限定だけど。

ヘンリー・ハサウェイ『死の接吻』1947,アメリカ,DVD

フィルムノワール名作。銀行強盗で捕まったニックは、警察の潜入捜査に協力して仮出所した。しかギャングのトミーに密告がバレてしまう…。
シナリオも、映像も、カット割りも無駄がなく、構成も緻密にエピソードが積み上げられ、綺麗にまとまった映画。刑事、密告者、密告された者、対立する人物同士の緊迫感がすばらしい。でも、男女関係の描き方が雑すぎ。
本作で、有名になったのが悪役トミーを演じたリチャード・ウィドマーク。この人の上目遣いでニヤッとした顔、ネチッとした声、台詞回しは、ほんっと人間のクズ。当時としては、この悪役にかなりショッキングなことをやらせていて、この彼の残虐性を語るシーンが、後半に伏線として効いてきて、主人公の恐怖感を半端なく盛り上げる。
トミーは映画史に残る悪役となった。手塚治虫が彼をモデルに悪役を描いたことは有名(↓真ん中;本作のリチャード・ウィドマーク、右;鉄腕アトムのスカンク草井)。

ハロルド・ベッカー『タップス』1981年,アメリカ

廃校が決まった陸軍幼年学校の若者たちが武装して反対闘争をはじめる。
子供の頃から愛国心と名誉一辺倒でゴリゴリに洗脳教育された者の行き着く先がコレ。井の中の蛙で、頭が固くて対話もできなくて、名誉のために大勢の命を危険にさらすことを正しいと信じて疑わない。偏った教育は、結局は悲劇を招く
青春映画ではあるんだけど、日本でも愛国心教育の論調が強まるなか教育のあり方を考えさせられる。愛国心が悪いと言ってるんじゃない。それが過去に何をもたらしたのか、危険な思想にもなりうることもきちんと教えて欲しいし、知っていてほしいだけ。
20才そこそこのトム・クルーズ、ショーン・ペンが初々しい。

パク・チャヌク『オールドボーイ』2003年,韓国,DVD
普通のサラリーマン、オ・デスは、ある夜、何者かに誘拐、監禁され、15年後に突然解放された。
これがカンヌグランプリなのかー。まじで?
負のどんでん返しとか、映像の美しさとか、スピード感あるバイオレンスアクションとか、面白い要素がないわけじゃないが…。原作が日本のマンガだから荒唐無稽だし。いや、そっちより、15年も監禁されて家族も人生も何もかも奪われちゃった方が復讐に値するでしょ…と物語の核心部分にも納得できず、催眠術とかご都合主義な展開もなんだかなぁ。
そして、これは私が苦手というだけなんだけど、恨みや情をど演歌並にベッタベタにぶちまけられると、どんどん醒めてしまう。演技も過剰だし。恨みや情はサラッと描いて深く想像させる。こういう描き方の方が、私はジンとくるけどなぁ。

クエンティン・タランティーノ『ヘイトフル・エイト』,2015年,アメリカ,DVD

猛吹雪のなか、山小屋に閉じ込められた8人。極悪人の指名手配女、賞金稼ぎの「首吊り男」、元北軍の英雄である黒人、寡黙なカウボーイ、元南軍将軍や南軍ゲリラの子孫などなど…。
密室劇で、3時間近くも飽きさせない、タランティーノの脚本力は本当に凄い。デビュー作『レザボアドックス』を下敷きに、登場人物のキャラクターをより立たせ、相互の利害関係をより緻密に組立てていった感じ。前作の『ジャンゴ』を見てないので分からないけど、今までに観てきた作品にはなくて、今回、全面に出ているのが差別。差別主義者を皮肉たっぷりに描いている。白人は黒人を、黒人はメキシコ人を、男は女を差別し、差別された黒人は白人を欺き、虐待することを何とも思わない。結末は、最も軽蔑しあっていた登場人物同士が手を取り合うのだけど、その共同作業ってのが人として最低の行為なわけで、お互いに崖っぷち状況でそんなことのためじゃないと協力し合えないのか?と、絶望的になっちゃう。
本作はR18指定。バイオレンスやエグいシーンも多いけど、この監督の「殺しのエンターテイメント的演出」は作品を追うごとに派手になっていて、本作ではホラーの域に突入した感。また、無駄なシーンが面白いという珍しい監督ではあるんだけど、今回はオマージュだけのためのシーンもあって、本当に無駄シーンもあったような気がする。
極悪人役のジェニファー・ジェイソン・リーの女を捨てた演技に目が釘付けになってしまったよ。たぶん、映画史上、最低最悪の汚れ役をここまで入り込んで演じられるって、凄い。

クエンティン・タランティーノ『レザボアドックス』,2015年,アメリカ,DVD

強盗のために集められた互いに知らない6人の男たち。予定通り宝石店を襲撃するが、警察が待ち構えていた。スパイはだれだ?!。
タランティーノ脚本・監督、デビュー作。ぐだぐだの会話からのスタート、疑心暗鬼での腹の探り合い、過激なバイオレンス、時間軸の操作によって導かれる驚きの展開…、タランティーノの得意技が全部盛り。低予算インディペンデント映画でもトップにくる作品
これを下敷きにしたのが前述の『ヘイトフル・エイト』。『レザボア・ドックス』でキーマンになるオレンジ役のティム・ロス、ブロンド役マイケル・マドセンが『ヘイトフル・エイト』にも出演。でも、大物監督になって、お金も好きな俳優も使い放題になると、むしろ、いまひとつ。『ヘイトフル・エイト』もなかなかだけど、私は単純なネタを、シチュエーションコメディならぬシチュエーションバイオレンスアクションで超おもしろくしてしまった『レザボア・ドックス』の方が好き。

クエンティン・タランティーノ『デス・プルーフinグラインドハウス』,2007年,アメリカ,パルテノン○摩・爆音上映

スタントマンのマイクは、自分の車を凶器にして女たちを殺し、楽しんでいた。ビッチvs殺人鬼!!!
グラインドハウスはB級映画を上映する映画館のこと。本作はタランティーノのB級映画へのオマージュ映画。もうこれは、B級どころか、Z級映画(B級にもならいほど酷すぎることがヘンな面白さや味わいを生む映画)の名作でしょう。
キャスティングもびっくり。殺人鬼はカート・ラッセル。ビッチ1にシドニー・ターミア・ポワチエ。←黒人俳優のパイオニア、シドニー・ポワチエと70年代超人気女優ジョアンナ・シムカスとの娘ね。ビッチ2にジョーダン・ラッド。←『シェーン』を演じたアラン・ラッドの孫。この名優とサラブレッド女優がぼっこぼっこにされちゃうんだから、タランティーノってすげぇ…って思う。
私は爆音上映という企画で見たのですが、車のエンジンの重低音がブォブォ響いて凄い迫力。テンションも上がって、最後は殺人鬼カートラッセルの情けない姿に、思わず拳を上げてひゃっほーい!って声上げそうになっちゃったよ(笑)。

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