2017年後半期の映画鑑賞メモ(5)

昨年書きかけてUPしてなかった映画を適当メモでUPしていくよ。

ダメ人間にだって明日はある!特集。
ダメ人間が主人公の映画って好き。共感できるから
この3本に共通するのは底辺から脱出することの難しさ。でも、国の事情が反映してるなぁと。『きっと、うまくいく』はインド映画。急成長中のインドらしく、大変だけど頑張れば何とかなる!と前向きなところがある。高度成長期日本の植木等的なノリがある作品。『天使の分け前』『トレインスポッティング2』はイギリス映画、成熟国イギリスらしく、努力だけじゃどうにもならないという諦めがある。今の日本はイギリスに近づきつつあるね…。

ラージクマール・ヒラニ 『きっと、うまくいく』2009年,インド,Amazon Video

エリート工科大学の3バカトリオだったファラン、ラージュー、ランチョー。卒業から10年後、ファラン、ラージューは消息不明のランチョーを探す旅に出る。青春時代と現在が交錯しながら、ランチョーの謎が明らかにされていく。
3時間の映画だけど、あっという間。ボリウッドお約束の歌も踊りもあり、笑いあり(今の日本では批判されそうなキツい笑いですが…)、友情と恋もあり、涙あり。でも、描かれている内容は真面目。インドが抱える根深い問題、例えば若者の自殺の多さ、過酷な競争社会、貧富の格差、身分制、豊かさ至上主義の価値観など。これをインドらしい明るいコメディに溶けこませて、テンポ良く見せていく。楽しいけど、決してお気楽映画ではないです。少しでもこういう問題が良い方に向かって、いつかランチョーの理想郷が実現しますようにと願わずににはいられない。 Aal Izz Well !(きっと、うまくいく)

ケン・ローチ『天使の分け前』2016年,イギリス・フランス・ベルギー・イタリア,録画

恵まれない環境に育ったロビーは傷害事件を起こしていた。人生を立て直そうにも、教育を受けてない、職もない、家もない、周囲は偏見の目。しかし、社会奉仕活動指導者ハリーとの出会いによって、彼はウィスキーテイスティングの才能が開花する。
結局、ロビーと彼の仲間が人生立て直しのチャンスをつかんだのは、ウィスキーを盗むという犯罪行為によってだ。でも、それは裏を返せば、真っ当な方法では這い上がれないということ。心底反省して、更正しようとしても、一度でも過ちを犯した者に社会はあまりにも不寛容で、底辺から抜け出すためのスタートラインに立つことさえできない。
盗みをいわゆる白波物のように娯楽的に演出し、一方でロビーたちを取りまく厳しい環境をリアルにしっかり描写したことで、彼らの犯罪行為があまり後味の悪さを残さない。天使の分け前とは、ウィスキーが樽で熟成中に毎年2%ずつ減ること。彼らが手にしたのは、いろいろあって、115万ポンド(1億5千万くらい?)のウィスキー樽から2%分のお金。ウィスキーにポンと1億円を使う人もいるけど、そのたった2%の「天使の分け前」で更生できる人たちがいる。ケン・ローチ作品では珍しくハッピーエンドだけど、救える人を救っていない社会であることを目の当たりにさせられる。

『T2 トレインスポッティング』2017年,イギリス,アルテリオ映像館

1996年に公開され、世界中の若者の心をガッツリつかんだ映画『トレインスポッティング』。スコットランドを舞台にヘロイン中毒のダメダメ若者たちの青春をポップに描いた。Choose life!。主人公レントンは悪友と手を切り、未来を手に入れ、The End。
じゃなかったー!。20年後、彼らはやっぱりどうしようもない人生を歩んでいた…。おじさんになっても、やることなすことアンポンタンで、女には欺され、20年前と大して変わってない。でも、しょうもない人生なりにちょっとだけ希望も見えて、この調子で彼らはこれからの人生も突っ走っていくのだろうな、でもそれでいいのだ!と思わせるラスト。96年トレスポで、もはやトレスポテーマ曲となったイギ-・ポップ『Lust for life』の使い方も秀逸。
前作のトレスポを見た時は、刹那的に生きる彼らに共感しにくいところも実はあった(映画は面白かったけどね)。しかし、私も彼らと同じように年をとって、心持ちや行動様式はそんなに変えられないことは身に沁みて分かってるし、顔にしわを刻んだ彼らを見ただけで、いろいろあったんだねぇ…と気持ちを自然に寄せられる自分がいたよ(笑)。同時代で見ることができて良かったと思う映画。
↓は90年トレスポの予告(上)と、2017年トレスポ2の予告(下)。

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