ランダ大佐に捧げるシュトゥルーデル

タランティーノ監督『イングロリアス・バスターズ』にシュトゥルーデルっていうお菓子が出てくる。
←コレですコレ。おいしそうでしょ。

ユダヤ人ショシャナはナチのランダ大佐に家族を殺され、復讐を誓いながらユダヤ人であることを隠して生きているのだけど、思いもよらないことでランダ大佐と会うことになる。シュトゥルーデルが出てくるのは、ナチ高官たちが出入りする高級レストランで、ランダ大佐がショシャナに「ここのシュトゥルーデルはいけるよー」と取ってくっつけたような笑顔ですすめながら、彼女がユダヤ人と知ってんのか知らないのか、威圧的な質問をする緊迫した場面。

←コイツが極悪人、ランダ大佐。でもわたし、頭がキレて、ニコニコしながら冷酷に相手を陥れていくような慇懃無礼な悪役って好き

先日、しばらくぶりに映画を見直したら、このシュトゥルーデルが無性に食べてみたくなった。ネットで調べたら、シュトゥルーデルはオーストリアのお菓子で、小麦粉・水・油を練って薄ーーーく伸ばした生地に溶かしバターを塗り、りんごやフルーツなんかをクルクル巻いて焼いたもの。レシピもいろいろUPされていて、あまり手間もかからなそうだったので作ってみた。
難しかったのは生地をのばす作業。レシピにはゲンコツぐらいの大きさの生地を、40×70~80センチぐらいまで薄く伸ばすとあって、新聞の文字が透けて読めるぐらいの薄さが理想なんですって。私は35×60センチぐらいで、端の方が思いっきり破けてしまった。これ以上は無理なんで、この辺で勘弁してもらうことに

できあがりはこちら。
あら?。映画に出てきたのとは見てくれがだいぶ違ったわ(笑)。ランダ大佐が、注文する時にクリームつけてねってわざわざ言ってたんで、私もぜいたくにクリームを添えて。
映画では生地がもっと薄くて何重にもくるくる巻いてあって、ナイフを入れるとシャリっと崩れてた。私のは二重巻き半ぐらいで、バリっと割れるorz。でも、んま~い。うん、これは超あっさりしたアップルパイだ。焼きたては生地がパリパリして、リンゴも生のまま使うから甘さも控えめ、バターの香りがふあっとぬける。わざわざ遠くのスーパーまで出向いて紅玉を買ったのは正解だった。やっぱこの酸味とシャキシャキ感がちょっと残るのが良い。クリームには砂糖を入れなかったけど、ケーキがあっさりしてるのでもの足りなかったかな。すこーし甘くした方が良かった。極甘のアップルパイにバニラアイス添える人もいるぐらいだものね。冷蔵庫に入れといたら翌日には生地がしっとりしちゃったけど、この季節、ひんやりしたリンゴもそれはそれでおいしかったわ。
参考にしたレシピはこちら>辻調理師専門学校:アプフェルシュトゥルーデル。材料のカイザーゼンメルはパン粉で代用。材料も手に入りやすく、意外に簡単に作れるのでオススメ。

で、映画の話に戻ると、ランダ大佐は用事がすむと、今まで美味しそうに食べてたシュトゥルーデルに吸ってたタバコをブスッと突き刺して退出。こんな美味しいものを灰皿代わりにするなんて許せねぇけど、こういう細かいところでタランティーノの演出の巧さを感じてしまう。若い女の子にケーキはいかが?、クリームで食べてみて、なーんて言ってた人がケーキにタバコ突き刺して部屋を出る。今までお前に合わせてやってたんだ、お前をいつでもつぶせるんだ。言葉に出す以上に高圧的で攻撃的で相手に有無を言わせない、ランダ大佐の底知れぬ恐さを感じさせる。

いつか専門店で食べてみたいなぁ。

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