4月の映画鑑賞メモ

ヘクトーロ・バベンコ『蜘蛛女のキス』,1985年,ブラジル=アメリカ,DVD
監獄のなかで、ゲイが恋したのは政治犯だった。蜘蛛女はモリーナ(ゲイ)なんだろうけど、モリーナじゃなくとも、人間である以上、性別、立場、社会的地位、思想…、いろんな糸に絡め取られている。でも、恋はそういう秩序を超えて落ちてしまうもの、絶対に幸せになれないと分かっていても。だから蜘蛛女は涙を流すんだね、きっと。

マイケル・チミノ『ディア・ハンター』,1978年,アメリカ,TOHOシネマズ午前十時の映画祭(27日)
ロシア系移民街の3人の青年がベトナム戦争へ。感動ではなく、重すぎて涙が出た。3時間という長い尺だが、シークエンスを絞り込み、一つ一つのエピソード、人物の内面を細やかに描写していく。生きても死んでも地獄の壮絶な体験、それぞれの心情、変わっていく人生のやりきれなさが、胸に迫ってくる。出演者は、デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、ジョン・カザール、メリル・ストリープ。当時の若手演技派役者ばかり。
ざっと見て、客層は50代以上のおじさまが8割ぐらい、あとは中高年女性と、若い男性が数名。今まで見ていなかった自分を高い棚に上げて言うけど、若い人にこそ、こういう映画を見て欲しいと思う。反戦は、戦争を知ることから。映画はニュースやドキュメンタリーでは伝わらないことを伝える。

トム・フーパー『英国王のスピーチ』,2010年,イギリス=オーストラリア,TOHOシネマズ(27日)
おもしろく、心あたたまる作品。ヨーク公(ジョージ6世)が吃音を克服していく過程が、兄エドワード8世の"世紀のスキャンダル"(2度の離婚歴のあるアメリカ人女性と結婚するため国王を退位した事件)と並行して描かれる。役者が芸達者でユーモアのある役者ばかり。ジョージ6世役には、いつもオドオドした目をしているコリン・ファース(代表作『真珠の耳飾りの少女』など)。思わず、が、がんばれ!と応援したくなる。先生役には演技派でもトップにくるだろうジェフリー・ラッシュ(代表作『シャイン』など)、王妃役にお嬢様から汚れ役までこなすヘレナ・ボナム・カーター(代表作『ながめのいい部屋』、『ビッグ・フィッシュ』など)。
とは言っても、この時代、アメリカの台頭でイギリスは凋落の一途をたどってるし、ヨーロッパでは革命の危険も去ってないし、第二次世界大戦前夜だし、それなのに、国王のエドワード8世は責任感まるでなしで女性とあそびほうけてるし…王室内部の軋轢や、ジョージ6世のストレスや苦しみは、実際に、こんな甘っちょろいもんじゃなかったろうと思う。

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