10月の映画鑑賞メモ

三池崇史『一命』,2011年,日本,TOHOシネマズ

小林正樹『切腹』(1962年)のリメイク。『切腹』は邦画の傑作だと思うが、若い世代は、よほどの映画好きでなければ見ないだろう。以前、若者にこのDVDを貸そうとしたら、「タイトルが暗いっす」の一言で断られたことがある…orz。若者に人気のある三池監督。たぶん、テーマはそのまま尊重し、構成をシンプルに、ストーリー展開を分かりやすくし、また貧乏浪人家族の悲惨さと家族愛を強調して、オリジナルを知らない若い世代にも共感してもらえるような作品にしたかったのだろうと思う。
途中までは、細かいことはいろいろあっても、瑛太の切腹シーンなどオリジナルを超えるシーンもあり、悪くないと思ったのだが。最後でしらけてしまった。残念。主人公の半四郎(海老蔵)が良い人すぎるのである。オリジナルより悲惨な前フリをしておきながら、あんな甘っちょろい「良い人の復讐劇」では、彼が「一命」をかけてまで井伊家に分からせたかったこと、彼の家族への仕打ちに対する恨み、体面だけで内実のない武家社会への怒りが、まるで伝わってこないではないか。単に、「海老様の格好いい見せ場」になってしまう。もし、井伊家が、半四朗によって相当の傷を受けたとしたら、最後の「誇りですから」という台詞も、中味のない名誉を守る虚しさをもっと深く考えさせる台詞になったんじゃないかなぁと思う。本作に限ったことじゃないが、「立派で美しい死」の演出って嫌いだな。
付け加えておくと、時代劇初の3Dという宣伝だったが、私は2Dで鑑賞。

フォローする