1月の映画鑑賞メモ

石井輝男『網走番外地』1960年,日本,DVD
白と黒と男の世界。ハリウッドのアクションやマカロニウェスタン要素を取り込んだ娯楽作として面白い上に、日本人のツボをわしっと掴む。自分の良心と囚人仲間への義理立ての狭間で悩んだり、極貧の過去やおっかさんへの思いとか、恩だとか人情だとか…。ベタだけど、遺伝子レベルでじーんとさせられちゃう。
今まで見た高倉健主演映画ではいちばんのお気に入り。初主演だと思うが、いつも雪のなかで葛藤している健さんのイメージがこの時にはすでにできあがっている(笑)。改めて鑑賞すると、高倉健よりも、脇役のアラカンや南原宏治がこの映画を名作にしたと言っていいぐらいに良い芝居をしている。特に、アラカンの見せ場は必見。往年の時代劇スターの凄味と貫禄に息を呑む。

ブライアン・デ・パルマ『ファントム・オブ・パラダイス』1974年,アメリカ,Blu-ray
伝説のロックオペラと言われている。初期のデ・パルマの傑作。デ・パルマは数本しか見てないけど、映像表現、演出の引き出しが多い人だなーとは思ってた。本作はそんなテ・パルマ節が乱れ咲き!。「ファウスト」、「オペラ座の怪人」、「ドリアングレイの肖像」のごちゃまぜストーリーに、手持ちカメラ・分割画面・スライドインアウトなど映像技法の駆使、主人公ファントムが駆け抜けていくようなテンポの良さ、70年代ロック先取りしたような衣装やメイク、圧倒されまくり。かといって、ストーリーをおろそかにしてなくて、主人公の悲劇にしっかり感情移入までさせる。凄い!。
残念なところは肝心の楽曲が…いまいち魅力がない(好みもあると思うけど)。デスレコードのプロディーサー、スワン役をシンガーソングライターのポール・ウィリアムスが嬉々として演じているが、このスワンは、ルパン三世の長編アニメ『ルパンVS複製人間』のマモーのモデルになったと言われてる。

ビリー・ワイルダー『あなただけ今晩は』1963年,アメリカ,DVD
ストーリーは無茶苦茶だけど、おしゃれ楽しいラブコメ。ビリー・ワイルダー、ジャック・レモン&シャーリー・マックレーン。『アパートの鍵貸します』と同じ監督・出演だけど、テイストは全く違う。本作はかなりチャップリンを意識していると思われる。まずドタバタコメディであること、視覚的に笑いを取ったり、コミカルな動きだけで台詞なしで語るシーンも多い。そして、男が、恋した女の子を可哀相な境遇から救い出すために涙ぐましい努力をするけど、彼女には絶対にその苦労を見せない、隠し通す。これ、チャップリンの恋愛ストーリーの王道。この男の一途さに、男も女もじんわりさせられてしまう。
そして、ビリー・ワイルダーは小ネタ・小技・小道具使いの達人だが、最初から最後までこれらの連続投下。映画小ネタもいっぱい。イギリス人紳士X卿に変装したジャック・レモンが、イギリス英語の発音練習で「スペインの雨は…」とつぶやいていたり、X卿のホラ話で、日本軍の捕虜になった時、橋が落ちてきていやー大変だったとか。そんな映画どっかにあったな(笑)。
ジャック・レモンは元コメディアンだから水を得た魚のようだし、娼婦役のシャーリー・マクレーンも超キュート!。

デビット・フィンチャー『ゴーン・ガール』2014年,アメリカ,イオンシネマ
こ、怖ぇーーー何を書いてもネタバレになりそう=細かいところまで詰められてるってこと。実は、謎解きが終わってからが本題。そういうことか…と納得して油断してると、畳みかけるように、恐ろしい真実が次々と明らかされていくいく。突き放 したような描写、信頼できない語り手による混乱、謎解きと妻の秘密が並行して明らかにされるシーン構成の巧さ…見る者をどんどん闇の向こうへと導いていくよう。冒頭の人生ゲーム、ラストカットは意味深だなぁ。
主演ロザムンド・バイクの演技も凄い。特に、テレビを見ながら、夫へ心変わりするカットにはゾクッ~としたよ…

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