2017年後半の映画メモ(3)

俳優はゲイ役で真価が問われる!
という映画友だちの格言に従い、おすすめの2本を鑑賞。1本はアル・パチーノ。もう1本は、本年度アカデミー賞主演男優賞を獲得したゲイリー・オールドマン&怪優アルフレッド・モリーナ。

ウィリアム・フリードキン『クルージング』1980,アメリカ,DVD

ゲイだけを狙った連続殺人事件が発生。警官スティーブ(アル・パチーノ)は囮捜査を命じられ、ハードゲイの世界へ潜入する。ハードゲイを世界に知らしめた映画としても有名。Cruisingは、ゲイ用語で男あさりの意味。
めくるめくハードゲイの花園。撮影にあたって、エキストラは全員本物を集めたらしく、マッチョな男たちの汗の臭いまで漂ってきそうな映画。
本作は、普通の青年がハードゲイの世界に魅入られていく過程が主テーマであって、殺人事件の犯人捜しはそのきっかけや環境を与えるためのサブストーリー。なので、見どころは、やっぱり主演アル・パチーノの変貌。彼の目つきが、犯人を探す捜査の目から、シーンを重ねる毎に、男をあさるような、ねちっこいギラギラした目に変わっていくですよ。殺人事件の真相より、え?捜査でゲイのフリしてるけだよね、あれ?もしかしてそっちの世界に行っちゃったの?!って方が、気になって仕方がない。ラストも意味深。殺人事件は解決しても、スティーブがそっちに行っちゃったかどうかは謎のまま。モヤモヤ~。
あと、どうでもいいけど、警察での取調べ中に唐突に出てきて、容疑者を殴り倒すテンガロンハットの人が謎すぎる。あれは何?。自白強要要員だとしても、なにゆえにあの格好なの?。知ってる方がいたら教えてください。

スティーブン・フリアーズ『プリック・アップ』,1987年,イギリス,DVD

実話が元ネタ。1960年代ロンドン、ゲイであることが犯罪だった時代。演劇学校で知り合ったジョー(ゲイリー・オールドマン)とケネス(アルフレッド・モリーナ)。作家を目指していたケネスはジョーに文学の手ほどきをし、生活も支えた。しかしケネスは芽が出ず、一方でジョーは劇作家として成功の道を歩み始める。
ケネスが糟糠の妻に見えてきたよ…。ケネスは才能もなく夢も叶わず、ハゲでデブで容姿も衰え、なのにジョーは一躍時の人となり、パンツまで洗ってあげているケネスのことをほったらかしにして、浮気三昧。愛した分だけ愛が欲しいケネスと、重い愛はウザいジョー。ケネスの劣等感や嫉妬や嫉み、愛の苦しみは、”ゲイだから”ってわけじゃない。だれにでも、私にもあるから切なくなるの。『クルージング』のような異世界を見る感覚はまったくなかったよ。ゲイのカップルの愛憎も、男女とそんなに変わらないんだなと。
ジョー役のゲイリー・オールドマン、かわえぇ。目つきまで色っぽくて、本当にゲイにモテそう。でも、どっちかというと、私が印象に残ったのはケネス役のアルフレッド・モリーナ。ケネスは、繊細で複雑な心情を持つ難しい役だと思うけど、痛々しくて、見ているのが辛くなるような迫真の演技だった。
本作を含めて二人とも若い頃はクセのある役が多かったけど、最近では味わいのある大俳優になったねぇ、しみじみ。

オマケ
最近のゲイリー・オールドマンと、アルフレッド・モリーナ。
左の画像はオスカーを獲得した時のゲイリー・オールドマン。右は『人生は小説より奇なり』(2016)のアルフレッド・モリーナ。アルフレッド、この映画でもゲイ役をやっていて、相手役はジョン・リスゴーなのですが…。なんか劇作家として大成したジョーと、実は新しいパートナーを見つけて幸せになったケネスみたいな感じになっちゃいました(笑)。

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