2017年後半期の映画鑑賞メモ(6)

2018年の書きかけ記事をコソコソUPする企画 2本目。
女の生き方特集!

セオドア・メルフィ『ドリーム』,2016年,アメリカ、イオンシネマ

1961年バージニア州。まだ黒人分離政策が行われていた米国南部。NASAで計算係として勤務していた黒人女性キャサリン、ドロシー、メアリーは差別に抗いながら各々の才能を発揮していく。マーキュリー計画を支えた女性たちの知られざる物語。実話。
1960年代、NASAという賢い人たちの集団でさえ、差別が「普通」のこととして浸透していて、差別する人は差別してる自覚がない。「あなたに偏見はない」と言う白人上司に、ドロシーが「偏見がないと思ってるのは分かってる」と答えるのがそれをよく表している。こんな厳しい環境にありながら、彼女たちが、才能と努力によって、周囲に差別を自覚させ、態度を改めさせ、そして自分たちの道を少しずつ切り開いていく姿は、とても清々しく、素直に感動した。テーマの割には大仰なストーリー・演出にせずに、彼女たちの小さなエピソードから(黒人トイレが遠すぎ問題とか)ひとつひとつの前進エピソードを丁寧に積み上げていく展開が、この清々しさ、カタルシスを生み出したと思う。そうそう、ケビン・コスナー、久しぶりに見たよー。
差別など真面目なテーマを、芯の部分で真面目さはキープしつつも、ややコミカルに演出するのは近年の流行なのかしら?。2019年アカデミー賞作品賞をとった『グリーン・ブック』も予告を見るとそんな雰囲気の映画だけど。物語に入りやすい、人物に共感しやすくなるなどの効果はあるかもね。

ウディ・アレン『ブルージャスミン』,2013年,アメリカ,録画

ジャスミンは実業家の夫と裕福な暮らしをしていた。しかし夫の詐欺罪が発覚し、セレブから転落。夫は獄中で自殺、息子は行方不明。文無しのジャスミンはシングルマザーの妹の家に身を寄せ、セレブ復活をもくろむが…。
アレンの真骨頂。アレンは「痛い人」を主人公にすることが多いけれど、「痛い人」への優しさがある。痛い人の痛いところを痛烈に、滑稽に描きつつも、必ず一片の憐れみや同情心をそっと添え、主人公を完全な嫌われ者にしない、その匙加減が実に絶妙なの。本作のジャスミンは、アレンの生み出したキャラのなかでも、スーパースペシャル「痛い人」。ひとりでは何もできず、お金もなく、中身はカラっぽなのに、化けの皮が剥がれないよう必死にセレブスタイルにしがみつく。これを演技派の女王様女優、ケイト・ブランシェットが演じるのだから、向かうところ敵なし!。彼女の不幸は自業自得だけど、息子に本心をチラッと見せる時はやっぱり切なくなってしまう。その弱さをうちあける素直さがあれば人生こんなふうにならなかったのにと。
ジャスミン役ケイト・ブランシェットは本作でアカデミー主演女優賞を受賞。ジャスミンとは対照的に、何度落ちても這い上がってくる逞しい異母妹を演じたサリー・ホーキンス(←この後『シェイプ・オブ・ウォーター』の主役で有名になった)も良かった。

ジョン・カサヴェテス『グロリア』,1980年,アメリカ,録画

アパートでマフィアの秘密を握った一家が殺された。たった一人生き残った少年フィルをご近所のグロリアが匿い、組織に追われる身に…。
グロリア、かっけぇ~!。グロリアを演じるのは、カサヴェテス監督の妻ジーナ・ローランズ。撮影時50才。ハイヒール、エレガントなスーツで、眼光鋭く腰を落として銃を構える姿は、惚れ惚れするわ。やさぐれ感を身にまとい、ヤバいことや子供なんかゴメンだよと突き放しつつも、弱き者を見るとどうしても放っておけない情の厚さは高倉健並み!(興奮して変な例えになってしまいました…)。ストーリーはNYを逃げ回ってるだけであまり面白味がないけど、ジーナ姐さんの存在感、緊張感あるアクションシーンの連続、セリフもカッコ良いし、見惚れてしまったよ。
フィル役の子供が、今時のこなれた子役に比べると素人っぽいけど、それもまたかわいい。ラストシーンの表情がとても良くて、ちょっと泣かせる。
後にも先にも、おばさんと子供を主人公にこんなカッコいいハードボイルドを作ったのはカサヴェテスだけでは?。おそらくリュック・ベッソン『レオン』は本作を下敷きにしてると思われる。

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『2017年後半期の映画鑑賞メモ(6)』へのコメント

  1. 名前:Sa-chan17 投稿日:2019/03/16(土) 12:56:02 ID:12bf68d16 返信

    「ドリーム」良かったですよね~「ファンダンゴ」から30年、ケビンコスナーはやっぱり良いな(^ω^)

  2. 名前:shimi 投稿日:2019/03/16(土) 13:18:17 ID:7d6e10f97 返信

    コメントありがとうございます!。『ドリーム』久々の感動映画でした。ケビン・コスナー、『ファンダンゴ』の時の爽やか青年も良かったですが、いい感じに年を取っていました。もっと出て欲しいなぁ。