2018年Best7映画~『ブレードランナー2049』,『ポゼッション』

2018年Best7映画~!
やっと昨年の話に追いついた(´・ᴗ・`;) 。Best5に絞りきれず…キリが悪いけどBest7で!。我ながら濃~い~7本だと思うわ。今日は2本紹介。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ『ブレードランナー 2049』

2017年,アメリカ,TOHOシネマ

ブレードランナーでレプリカントのK(ライアン・ゴスリング)は、ある遺骨を発見する。遺骨には人間とレプリカントの関係を変えるかもしれない秘密がかくされていた…。

リドリー・スコット『ブレードランナー』(1982)は、SF映画の未来都市はブレランの前と後に分けることができる…というぐらいの金字塔映画となった。それだけに別監督で続編を作るってどうなの?と思ったけど、前作の世界観をきっちり踏襲しつつ、引けをとらない出来映え。
リドリー・スコット監督は、単純な対立構図を描くのは上手なの、人間対エイリアンとか。でも哲学的なテーマを深めたり、複雑なストーリーを展開するのは得意じゃないっぽい。前作も、人間とレプリカントの対立・闘いはキレが良いけど、レプリカントと人間の違いは?、レプリカントの存在意義は?といったテーマは、ストレートなセリフと表現で示唆した程度にとどまった。ストーリーの詰めも甘く、この詰めの甘さが映画ファンの間で、例えばデッカードレプリカント説とか、いまだにぐっちゃぐちゃに議論される元凶にもなってると思う。

しかし、今回のドゥニ監督は、 レプリカントを完璧に支配下において神になりたい人間と、奇跡によって生まれた「救世主」に未来を託すレプリカントという壮大な物語を展開しつつ、様々な立場のレプリカント、AIの心情という繊細な部分にも寄りそって、哲学的なテーマを深化させた。
レプリカント・AIたちは、基本、主人に忠実でありながらも、そこに愛があったり、嫉妬があったり、疑念が湧いたり、抵抗したり、レプリカントを支配することしか考えてない人間より、ずっと人間的。最も人間的な行為って自己犠牲だと思うんです(ちょっとネタばれ・汗)。主人公K(ライアン・ゴスリング)は、レプリカントには利用され裏切られ、人間にはこき使われるだけの存在だけど、自己犠牲という選択によって自分の存在意義を見いだしていく、そこに至るまでのミステリータッチなドラマ運びの巧さ、心情の見せ方が細やかすぎて、泣ける(T_T)。
鑑賞前は、前作のロイ・バッティ役のルトガー・ハウアーに比べて、K役のライアン・ゴスリングは存在感がなぁ…と思ってたのですが、いやいやいや、レプリカント感が半端ないし、ロイ・バッティよりずっと重いKの人生を観客のなかに残し、ルトガーとは違った存在感を見せた。

ドゥニ監督の作品を3本鑑賞したけど、最近の私の推し監督。冷たい空気感がただよう映像とか、複雑なストーリーを整然と展開しちゃうカット捌きとか、好きだなぁ。

アンジェイ・ズラウスキー『ポゼッション』

1981年,フランス/西ドイツ,DVD

西ベルリン郊外。夫マルクが海外出張から帰ると、妻アンナがよそよそしかった。マルクは次第に狂気を帯びていく妻の秘密を探りはじめるが…。ポゼッションとは取り憑かれるという意味。

いろんな意味でぐちゃぐちゃな作品(笑)。強いて言うならホラー。展開は支離滅裂だし(特に後半)、セリフも小難しいけど、監督が社会主義時代のポーランドから追い出された人で、奥さんを他の男性に取られてしまったという経歴を考えると、分からなくもない。抑圧と他者の理解不能な部分を描きたかったのだろう。
序盤でベルリンの壁のカットが印象的に出されるが、夫婦間の壁、抑圧のメタファーだと思う。セリフにもあるけど、アンナが良い妻で、優しい母親であることは、マルクには「善」であっても、彼女には抑圧でしかない。抑圧は、彼女のなかに「悪」=欲望や自由への願望を生みだし、肥大化させる。そして「悪」にのっとられた彼女は、彼にはまったく理解不能で、狂気そのものだ。彼女の欲望をクリーチャーとして具象化しているのだけど、最終形態が意外なもので、なるほど、そうきたか!と思ったよ。
そして注目したいのは、やっぱりイザベル・アジャーニの鬼気迫る演技ですよね~。調べると、この時25,6才くらい。この美しい花の盛りに、血を吐いて、ゲロも吐いて、目をひんむいて狂っていくって…監督も監督だが、アジャーニの女優魂も凄いと思う。「ゲロは事務所的にNGでーす」(どっかで聞いたセリフ・笑)なんていう日本のアイドル女優に、アジャーニの爪の垢煎じて飲ませたい…。
予告の動画を埋め込みましたが、ホラーなので、苦手な人は注意してくださいませ。

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