2018年Best7映画~『ボヘミアン・ラプソディ』、『アイ・トーニャ』

東京に出てきた頃、心の支えだった映画館がコロナショックによる減収でピンチだというので 、 微々たるお金ですけど…はじめてクラウドファンディングで出資したshimiです、こんにちはっ!。思い出の映画館がこれ以上なくなってほしくないので、何とか頑張ってほしい。

2018年Best7、最後の2本は伝記映画~。

ブライアン・シンガー『ボヘミアン・ラプソディ』

2018年,アメリカ・イギリス,TOHOシネマ

クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの半生を描く。

大ヒットになりましたねぇ。クイーンファンの私もここまでヒットするとは思わなかったわ。
正直に言うと、ファンだから物足りなかったところがあった。まずクイーンという伝説バンドの物語が、売れない→スター→仲間割れ→仲直りという、「バンドあるあるストーリー」になってしまったこと。
物語をことさら感動的にするためにわざと語らなかった部分もあった。フレディのソロアルバムがメンバー亀裂の決定打みたいに描かれていたけど、フレディの前にロジャーがソロアルバムを出してる、2枚も。また、映画ではメンバー対立で完全活動休止→ライブエイドでクイーン復活な印象になっているけど、実際はメンバーの仲がギスギスしていても活動は続けていて、南米や南アフリカで大きなライブも成功させており、その経験があったからライブエイドも成功したといわれている。
フレディの半生も、今の時代にウケるテーマを描くためのアイコンにされちゃった感じがする。LGBTとか、自分らしくとか、やっぱり仲間は大切とか、とても分かりやすく描かれていた(だからクイーンを知らない若者世代にもウケたのだと思うけど)。フレディの悩みって、そんなに陳腐だったの?と…プチ悶々。
メンバーそれぞれが高い音楽性を追求しつつバンドを維持していく難しさとか、ミュージシャンの苦悩とかいう意味では、『ジャージーボーイズ』『ローズ』の方が上だと思う。

それでも見て良かった~と思わせてくれたのは、ディテールにまでこだわったライブの再現と楽曲が良かったから。もうね、フレディ役ラミ・マレックの足の上げる角度、歩幅も、腕の上げ方も、胸の反らせ具合も、フレディにしか見えなかったわ。最後のライブシーンでは「フレディ!」と立ち上がって叫びたい衝動を抑えるのが大変だったくらいよ(笑)。ブライアン・メイ役のグウィリム・リーも表情や声のトーンまでブライアンだった。
そしてオープニングとエンディングの選曲が良かった。オープニング「Somebody to Love」は映画のテーマにぴったり。エンディング「The Show Must Go On」は、フレディ生前最後のアルバム『イニュエンドゥ』に収められた曲。レコーディングの時フレディはもう立てない状態だったのに、あの力強いヴォーカルで「Show must go on」と歌っているのかと思うと、聴くだけで涙(T-T)が出そうになるですよ。映画のラストを飾るのにふさわしい。この2曲は、愛する人を探しつづけ、そしてショーを続けなければと歌いながらこの世を去ったフレディの人生そのもの。

【プチ情報】本作より、BBCが製作したクイーンのドキュメンタリー番組『輝ける日々』の方が、真実のクイーンが見えてきて面白いです。DVDになってます。アマゾンでも購入可。

『The Show Must Go On』日本語訳付き

グレイグ・ガレスピー『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』

2018年,アメリカ,○○アートセンター

フィギュアスケート史上最大のスキャンダル、1994年「ナンシーケリガン襲撃事件」の中心人物トーニャ・ハーディングの半生と事件の裏側を描く。

いわゆる『羅生門』スタイル。事件に関わった人たちが、それぞれの視点からトーニャの半生と事件を語り、そのウソかホントか分からない証言エピソードの映像化によって物語が構成される。伝記映画は『ボヘミアン・ラプソディ』のように波瀾万丈人生を真面目に描くのが普通だけど、本作は演出もワイドショー的でぶっとんでるし、ノンフィクションよりのエンターテイメント徹底追求という、伝記映画としてはかなり斬新な語り口
だから、どこまで真実かは分からない。どんな理由があろうと暴力をふるった側が悪い。しかし、家庭にも恵まれず、貧しく、母親と夫の暴力に絶えずさらされ、彼女の周囲に集まってくるのはバカばっかり。才能があっても、階級主義の壁に何度もはじかれる。どんなに殴られたって、逞しく、図太く生きる彼女に同情させられてしまったので、映画としては成功。
スケートシーンの映像もすごい。どうやって撮影したの?って思うシーンもある。

私、クイーンファンですが、実は…『アイ、トーニャ』の方が面白かった(小声)

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