2019年Best5映画~『質屋』、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

私の諸活動は、それぞれピークが変動したり、低迷したり、休止したりとムラがあるのですが、この1~2か月はパンお菓子活動↓、映画活動↓↓、俳句活動→、一方で休眠中だったリコーダー活動が↑↑↑↑↑と大激変が起きているshimiです、こんにちは!。そのうちリコーダーについてもブログで紹介できたらと思っています。

ではでは。2019年映画Best5の続きで、社会派映画2本。

シドニー・ルメット『質屋』

1964年,アメリカ,DVD,ごろ寝シアター

ソルはNYハーレムで質屋を経営していた。ナチ強制収容所で過酷な経験をした彼は神も人間も信じななかった、信じられるのはお金だけ。彼は孤独で心は冷え切っていた。

ホロコーストの映像を集めたドキュメンタリー映画『夜と霧』が公開されたのが1955年。映画でホロコースト生存者を取り上げたのは、この『質屋』が最初かも。『夜と霧』を意識したシーンもある。
『ソフィの選択』のソフィもそうなのだけど、主人公ソルにとって生き延びたことが地獄。家族や友人のために何もできなかった罪悪感と凄惨な記憶を持ち続けて生きなくてはならないから。ソルはいつも質屋の強盗防止の鉄格子のなかにいるけど、心が収容所から心が解放されていないことを暗示しているよう。
ソルにとって、この地獄から逃れる術は「死」だけなのだと思う。しかし皮肉なことに死だけは自由にはならない。夢を持つ青年が自分の身代わりになって死に、死を待っているだけの自分はまた生き延びる。これほどの絶望感があるだろうか。
後から知ったのだけど、青年の名前ヘスースはスペイン語読みのジーザスだそう。神を殺したということか。だとしたら救いもない。神の不在や、信仰のない者の孤独は、文学や映画では珍しくないテーマだけど、ここまで徹底して神をののしり、それでも差しのべられる救いをかたくなに拒むほど深い孤独に墜ちた人って…ほかに思いつかない。

そして、ロッド・スタイガーの映画でもある。彼は憑依系の俳優で演じる役で全くの別人になるけど、この映画でも同じソルなのに、収容所に入る前のソル、収容所のソル、収容所後のソルで 全く別人に見えるのよ。収容所が、人間を別人になるほど変えたという重さまで完璧に演じている。ロッド・スタイガーは前から凄いとは思ってたけど、まだそれを超える演技があったか!と、驚愕したよ。

【おまけ】
『質屋』の動画は良いものがなかったのですが、動画を探してた時、うおおおぉ!な映像を見つけたので貼り付けておきますね。『質屋』から4年後の1968年、ロッド・スタイガーが『夜の大捜査線』でアカデミー主演男優賞を受賞した時の映像。プレゼンターがオードリー・ヘップバーン、ノミネートが『俺たちに明日はない』ウォーレン・ビーティ、『暴力脱獄』ポール・ニューマン、『卒業』ダスティン・ホフマン、『招かざる客』スペンサー・トレーシー、そしてロッド・スタイガー。なにこのハイレベルな賞レースは…。だれが受賞してもおかしくなかったよね、これ。
それにしても、上のポスターと同じ人とは思えないでしょ。



スティーブン・スピルバーグ『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

2017年,アメリカ,DVD,ごろ寝シアター

1971年、ベトナム戦争について不都合な事実が書かれた機密文書ペンタゴン・ペーパーズが流出した。ワシントン・ポストの社主キャサリンと編集主幹ベンは真実と報道の自由ために奔走する。

内容はペンタゴン・ペーパーズというより、ポストがペンタゴン・ペーパーズを掲載するまでの過程を通じて、報道のあり方を問うことに重きを置く。同時に自信もなく、男社会のなかで軽んじられていたキャサリンが、会社の存亡を賭けた決断をする経営者へ成長していく姿も描かれる。良質な社会派映画であり、女性の社会進出を描く人生ドラマであり、スピルバーグ監督らしいハラハラドキドキなエンターテイメント性も備えているという、贅沢な映画

この映画の背景にはトランプ大統領批判があるのは明らか。トランプがワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズを名指しで批判したり、自分に都合の悪い報道をした記者を会見から追い出すなど、政府の報道機関・記者に対する露骨な圧力をかけているのは周知の事実。日本でも報道機関への露骨な圧力はないかもしれないけど、政治が明らかに劣化しているにも関わらず、政権への「忖度」がある。政府に批判的な質問をする記者は、政府が情報を出さなくなるからと記者からも嫌われるらしい。この映画を見ると、現在の社会が、権力への批判が正しく機能していた50年前とはほど遠い状況にあることに気付かされ、批判や抵抗が権力の脅威になっていないって…怖い時代だなと思う。

時代の描写も活き活きしている。こういうところはスピルバーグ~やるね~って感じ(笑)。スマホもPCもなく、電話と足で記事を取りに行く記者たち、タイプライターで記事を書き、活版印刷で文字が組まれ、輪転機で新聞が刷られていく様子(終盤のカット運びは上手いなー)にワクワクする。キャサリンのレトロファッションも素敵。そしてラストカットが粋!。この映画の続きは、アラン・J・パクラ『大統領の陰謀』(1976年)でどうぞ(^^)~。    

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『2019年Best5映画~『質屋』、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』』へのコメント

  1. 名前:Sa-chan17 投稿日:2020/07/23(木) 22:38:03 ID:848172d54 返信

    「ペンタゴンペーパーズ」は本当良い作品
    キャサリンの自伝も面白かったし、もう一回観たくなる映画ですね。リコーダー頑張って下さい(^ω^)

    • 名前:shimi 投稿日:2020/07/23(木) 23:52:14 ID:e8fba02bf 返信

      『ペンタゴン…』は一瞬も飽きずに見てしまいました。そして現代の怖さも考えさせられました。リコーダー、まだまだですが、人に聴いてもらえるぐらいにはなりたいです。ロックもやりたいので、楽譜、探し中です。頑張ります。(´・ω・)キリッ