9月の映画鑑賞メモ

9月は仕事も気持ちもモヤモヤモヤーっとして、HPの更新をサボっていた(^^ゞ。すこし整理がついたので、ぼちぼちと再開することに。

ジョエル&イーサン・コーエン『トゥルー・グリット』,2010年,アメリカ,DVD

正当派西部劇、ジョン・ウェイン主演、ヘンリー・ハサウェイ監督『勇気ある追跡』(1969年)のリメイク。結論から言うと、『トゥルー・グリット』>>>『勇気ある追跡』。コーエン作品は一寸先も闇、全く予想できない展開が魅力であるが、本作は素直すぎて物足りない。ストーリーもあまり変えていないし、予定通りに話が進んでいく。
しかし、人物造けいの深さ、映像の美しさ、時代考証、アカデミー賞作品『ノーカントリー』にも通じる去りゆく者の諦めとさみしさ、殺伐とした世界のなかの叙情性…じわじわと滲みてくる。特に、主人公の女の子マティの描き方が良い。『勇気ある追跡』では優等生すぎて、自分は何もしないくせに、型にはめたような嘘くさい正当性が最後までまかり通ってしまうから、小憎らしい。しかし、本作のマティは強気だけど、考えの甘さ、正論がまかり通らない現実を知っていく過程が、繊細に演出されていく。『勇気ある追跡』との一番の違いで、一番好きなのはハッピーエンドにしていないとこ。コーエンは老いたヒーローを時代の流れのなかに消し去り、少女には復讐の代償をちゃんと支払わせる。

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